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  • 2023.12.03

アート・パンクについてと岩田商店、poe - 副院長より25

めっきり寒くなりましたね。副院長の森豊和です。当院から程近い阿下喜にあるギャラリー岩田商店と、桑名は益生にある本、雑貨屋poe(ピーオーイー)でホリデイ・シーズン向けの品が充実していたので、その紹介ついでに書いていきます。



なぎさ: 先生、おはようございます。そのコーヒーの器はどうしたのですか? ぐにゃっとして可愛い。



阿下喜にあるギャラリー、岩田商店のクリスマス・マルシェで買ってきたんです。毎年いろんな作家さんの作品を販売してて。女性の小物やアクセサリーは分からないけど、このカップは気に入って。にしむら☆めいさんという方なんですが。

絵でも立体物でも、音楽や文学でも、作った人の歴史や人柄が浮き彫りになるから、こういった一点物は割と好きですね。



なぎさ: ラジオDJの選曲でも人間性が浮き彫りになりますか? (ブルーハーツ/クロマニヨンズの甲本)ヒロトが、最近ラジオDJで、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの曲と、影響を受けたジョナサン・リッチマンが彼らの曲をカヴァーしているのを続けてかけたんです。その流れか、ヒロトの実家がクリーニング屋で、家の手伝いをしてて、一時期ヴェルヴェットの素材に触ることにはまったと言ってて(笑)。

はい、その放送は私も聴きました。2曲かけた後に、「小さな子どもがお母さんの下着の肌ざわりにはまって、お客さんが来てもずっと握ってるからお母さんが困った」という話をしてましたね。いつも思うんですが、彼はさらっと重要なことをほのめかしている気がします。

ヴェルヴェット・アンダーグラウンドというバンド名は、ニューヨークの路上に捨てられていたSM小説の題名から取られています。雑談のようで、実は音楽性の由来だったり、子どもの持つ無意識の願望、衝動みたいなものについて説明してるのかも。



なぎさ: それこそパンクですね。ヒロトが良くラジオでかけてるミュージシャン、その前後関係がこんがらがるんです。カルト的に支持されてる人たち。

ブルーハーツに影響を与えた、ラモーンズやクラッシュ、ジャムのようなパンク・ロックですね。リアルタイム世代の方からすれば、簡略化しすぎだと言われそうだけど、パンクのルーツ、源流をたどれば、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドに行き着くと思います。そしてストーンズ、バーズ、さらにアレックス・チルトンのビッグ・スターアーサー・リーのラヴ、そして勿論、イギー・ポップ、デヴィッド・ボウイ辺りが音楽史の教科書なら、パンク前史のページで太字になると思います。



マルコム・マクラーレンが英国でセックス・ピストルズを仕立て上げる前に、ニューヨーク・ドールズというグラム・ロック・バンドのマネージャーをしていたとか。テレヴィジョンのメンバーだったリチャード・ヘルを「ピストルズのメンバーにならないか」と誘っていたとか。そもそもニューヨーク・ドールズは英国のパブ・ロックバンド、ドクター・フィールグッドに影響されていたとか。

なぎさ: ドクター・フィールグッドもよくヒロトが選曲します。英米で音楽性のフィードバックが繰り返されてるんですね。ビートルズだって、黒人音楽や、プレスリーは勿論バディ・ホリー、チャック・ベリー、リトル・リチャード、お手本となるロックミュージシャンが沢山いたんですものね。



無理やりだけど、ブルースをロックの生みの親だとすれば、ドラ息子のロックは、ジャズ、クラシックは勿論、さらにソウル、ファンク、レゲエなど世界の音楽を吸収して成長し、今度はヒップホップにサンプリングされるという逆転現象も起きて、黒人音楽と白人音楽が互いに影響しあっています。その象徴の一つがプリンスです。ディアンジェロやフランク・オーシャンといった、現行のソウル・ミュージシャンの多くがプリンスをリスペクトしています。

なぎさ: こないだヒロトがかけていたテレヴィジョン・パーソナリティーズもよかったです。歌が上手いわけではないけど、適当にやろうよと呼びかけてるみたいでほっこりする。



私もよく知らないけど、なんかいいんですよね。彼らはパンクとサイケデリックを出自に、90年代以降のロックに影響を与えたそうです。アラン・マッギーが主宰イベントで演奏させていたバンドで、彼らに影響されてアランはレーベルを始めた。だからクリエイション・レーベルのバンド、プライマル・スクリームやオアシスの兄貴分と言えるかもしれないし、ニルヴァーナのカート・コバーンもお気に入りだそう。

また、ニューヨーク・ドールズのギタリスト、ジョニー・サンダースはRCサクセションのアルバムに参加していますが、RCサクセションに影響を受けた後進として、ブルーハーツ、ボ・ガンボス、90年代以降はユニコーン、スピッツ、ウルフルズ、フィッシュマンズ、2000年代以降も、踊ってばかりの国、betcover!!といった多くのバンドがその系譜にいて、忌野清志郎は現在に至るまで日本のロックの基準点の一つになっています。

なぎさ: こないだ先生に教えてもらった、ボ・ガンボスの前身バンド、ローザ・ルクセンブルグ、清志郎好きなんだなと思いました。RCサクセションというよりザ・タイマーズ?みたいな。

バンド名がマルクス主義の革命家からですしね。80年代前後のいわゆるポストパンクの話に戻ると、ピストルズのジョン・ライドンが始めたP.I.L、デヴィッド・バーン率いるトーキング・ヘッズ。デヴィッド・ボウイやイギー・ポップがクラフトワークのような音楽を演奏したら?というジョイ・ディヴィジョン、ニューオーダー。彼らとともに最も深くレディオヘッドに影響を与えたとされるR.E.M.やザ・スミス。この時代以降のロックは英米以外の世界中の音楽を取り入れて変化していっています。



こういった、誰が誰に影響を受けた、どういった生い立ちで、どういった社会との関係性から芸術が生まれたかは、とても大切だし、つまるところ芸術は人間の営みだから、人間を理解することです。精神的な意味で、パンクとは、様式に囚われないこと、周囲に惑わされないで己の信念を貫くこと言えるかもしれません。結局、芸術とは、という話になる。

例えば、絵に置き換えて話すと、先月、岩田商店で展示されていたこの作品、気になったんです。タイトルが「Myself」、つまり自己となっていて、ますます興味をひかれました。作者の太田朋伽さんによると、なるべく何も考えず、その時の手の動きに任せて、ペンを走らせドローイングする。すると、その時々の心理状態が反映されるから、剥き出しの自分のようで落ち着かない。そのため、トレーシングペーパーをかけた、というのが制作経緯だそうでした。朋伽さん自身は、描いた後で、この絵が忙しい現代人の群れに見えたって。



なぎさ: うーん・・・・私には地獄の業火のように見えます。

私にはドラゴンのような架空の動物の群れの影絵のように見えて。精神科医が一番幼稚な発想です(笑)。ロールシャッハ・テストみたいですね。

この作品をロックやヒップホップの例えに使いたいのは、ペン、画用紙、トレーシング・ペーパーといった簡単な材料、そして様式に囚われない心。それらの組み合わせで、新しいもの、唯一のものを創造しているからです。別に分かりやすくなくていいし、綺麗でも洗練されてなくてもいい。

なきさ:    私も次の絵を描く時にそのことを意識してみます。あら?机にもう小さなクリスマス・ツリー飾ってあるんですね。木彫りのマスコット?




これ、実は、桑名の隣の駅、益生駅そばにあるpoe(ピーオーイー)という本屋、雑貨屋さんで買ったマトリョーシカなんです。中にサンタさん、さらに雪だるまも入ってる。可愛いでしょう?

ロシアから輸入してて、戦争が始まって入りにくくなったけど、今年もなんとか入ったと店主が言ってました。世界各地の人々の生活に根差した品物って惹かれます。マトリョーシカは中国や日本の民芸品にヒントを得てるそうです。ここでも文化が交錯してる。好みは人それぞれだから、プレゼントしようと思うと、悩みますけど。

なぎさ: 心配しないでいいですよ。岩田商店もpoeも私を連れてってください。ほしいの選ぶから買って。女性の小物やアクセサリーは私、わかりますよ!
めっきり寒くなりましたね。副院長の森豊和です。当院から程近い阿下喜にあるギャラリー岩田商店と、桑名は益生にある本、雑貨屋poe(ピーオーイー)でホリデイ・シーズン向けの品が充実していたので、その紹介ついでに書いていきます。



なぎさ: 先生、おはようございます。そのコーヒーの器はどうしたのですか? ぐにゃっとして可愛い。



阿下喜にあるギャラリー、岩田商店のクリスマス・マルシェで買ってきたんです。毎年いろんな作家さんの作品を販売してて。女性の小物やアクセサリーは分からないけど、このカップは気に入って。にしむら☆めいさんという方なんですが。

絵でも立体物でも、音楽や文学でも、作った人の歴史や人柄が浮き彫りになるから、こういった一点物は割と好きですね。



なぎさ: ラジオDJの選曲でも人間性が浮き彫りになりますか? (ブルーハーツ/クロマニヨンズの甲本)ヒロトが、最近ラジオDJで、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの曲と、影響を受けたジョナサン・リッチマンが彼らの曲をカヴァーしているのを続けてかけたんです。その流れか、ヒロトの実家がクリーニング屋で、家の手伝いをしてて、一時期ヴェルヴェットの素材に触ることにはまったと言ってて(笑)。

はい、その放送は私も聴きました。2曲かけた後に、「小さな子どもがお母さんの下着の肌ざわりにはまって、お客さんが来てもずっと握ってるからお母さんが困った」という話をしてましたね。いつも思うんですが、彼はさらっと重要なことをほのめかしている気がします。

ヴェルヴェット・アンダーグラウンドというバンド名は、ニューヨークの路上に捨てられていたSM小説の題名から取られています。雑談のようで、実は音楽性の由来だったり、子どもの持つ無意識の願望、衝動みたいなものについて説明してるのかも。



なぎさ: それこそパンクですね。ヒロトが良くラジオでかけてるミュージシャン、その前後関係がこんがらがるんです。カルト的に支持されてる人たち。

ブルーハーツに影響を与えた、ラモーンズやクラッシュ、ジャムのようなパンク・ロックですね。リアルタイム世代の方からすれば、簡略化しすぎだと言われそうだけど、パンクのルーツ、源流をたどれば、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドに行き着くと思います。そしてストーンズ、バーズ、さらにアレックス・チルトンのビッグ・スターアーサー・リーのラヴ、そして勿論、イギー・ポップ、デヴィッド・ボウイ辺りが音楽史の教科書なら、パンク前史のページで太字になると思います。



マルコム・マクラーレンが英国でセックス・ピストルズを仕立て上げる前に、ニューヨーク・ドールズというグラム・ロック・バンドのマネージャーをしていたとか。テレヴィジョンのメンバーだったリチャード・ヘルを「ピストルズのメンバーにならないか」と誘っていたとか。そもそもニューヨーク・ドールズは英国のパブ・ロックバンド、ドクター・フィールグッドに影響されていたとか。

なぎさ: ドクター・フィールグッドもよくヒロトが選曲します。英米で音楽性のフィードバックが繰り返されてるんですね。ビートルズだって、黒人音楽や、プレスリーは勿論バディ・ホリー、チャック・ベリー、リトル・リチャード、お手本となるロックミュージシャンが沢山いたんですものね。



無理やりだけど、ブルースをロックの生みの親だとすれば、ドラ息子のロックは、ジャズ、クラシックは勿論、さらにソウル、ファンク、レゲエなど世界の音楽を吸収して成長し、今度はヒップホップにサンプリングされるという逆転現象も起きて、黒人音楽と白人音楽が互いに影響しあっています。その象徴の一つがプリンスです。ディアンジェロやフランク・オーシャンといった、現行のソウル・ミュージシャンの多くがプリンスをリスペクトしています。

なぎさ: こないだヒロトがかけていたテレヴィジョン・パーソナリティーズもよかったです。歌が上手いわけではないけど、適当にやろうよと呼びかけてるみたいでほっこりする。



私もよく知らないけど、なんかいいんですよね。彼らはパンクとサイケデリックを出自に、90年代以降のロックに影響を与えたそうです。アラン・マッギーが主宰イベントで演奏させていたバンドで、彼らに影響されてアランはレーベルを始めた。だからクリエイション・レーベルのバンド、プライマル・スクリームやオアシスの兄貴分と言えるかもしれないし、ニルヴァーナのカート・コバーンもお気に入りだそう。

また、ニューヨーク・ドールズのギタリスト、ジョニー・サンダースはRCサクセションのアルバムに参加していますが、RCサクセションに影響を受けた後進として、ブルーハーツ、ボ・ガンボス、90年代以降はユニコーン、スピッツ、ウルフルズ、フィッシュマンズ、2000年代以降も、踊ってばかりの国、betcover!!といった多くのバンドがその系譜にいて、忌野清志郎は現在に至るまで日本のロックの基準点の一つになっています。

なぎさ: こないだ先生に教えてもらった、ボ・ガンボスの前身バンド、ローザ・ルクセンブルグ、清志郎好きなんだなと思いました。RCサクセションというよりザ・タイマーズ?みたいな。

バンド名がマルクス主義の革命家からですしね。80年代前後のいわゆるポストパンクの話に戻ると、ピストルズのジョン・ライドンが始めたP.I.L、デヴィッド・バーン率いるトーキング・ヘッズ。デヴィッド・ボウイやイギー・ポップがクラフトワークのような音楽を演奏したら?というジョイ・ディヴィジョン、ニューオーダー。彼らとともに最も深くレディオヘッドに影響を与えたとされるR.E.M.やザ・スミス。この時代以降のロックは英米以外の世界中の音楽を取り入れて変化していっています。



こういった、誰が誰に影響を受けた、どういった生い立ちで、どういった社会との関係性から芸術が生まれたかは、とても大切だし、つまるところ芸術は人間の営みだから、人間を理解することです。精神的な意味で、パンクとは、様式に囚われないこと、周囲に惑わされないで己の信念を貫くこと言えるかもしれません。結局、芸術とは、という話になる。

例えば、絵に置き換えて話すと、先月、岩田商店で展示されていたこの作品、気になったんです。タイトルが「Myself」、つまり自己となっていて、ますます興味をひかれました。作者の太田朋伽さんによると、なるべく何も考えず、その時の手の動きに任せて、ペンを走らせドローイングする。すると、その時々の心理状態が反映されるから、剥き出しの自分のようで落ち着かない。そのため、トレーシングペーパーをかけた、というのが制作経緯だそうでした。朋伽さん自身は、描いた後で、この絵が忙しい現代人の群れに見えたって。



なぎさ: うーん・・・・私には地獄の業火のように見えます。

私にはドラゴンのような架空の動物の群れの影絵のように見えて。精神科医が一番幼稚な発想です(笑)。ロールシャッハ・テストみたいですね。

この作品をロックやヒップホップの例えに使いたいのは、ペン、画用紙、トレーシング・ペーパーといった簡単な材料、そして様式に囚われない心。それらの組み合わせで、新しいもの、唯一のものを創造しているからです。別に分かりやすくなくていいし、綺麗でも洗練されてなくてもいい。

なきさ:    私も次の絵を描く時にそのことを意識してみます。あら?机にもう小さなクリスマス・ツリー飾ってあるんですね。木彫りのマスコット?




これ、実は、桑名の隣の駅、益生駅そばにあるpoe(ピーオーイー)という本屋、雑貨屋さんで買ったマトリョーシカなんです。中にサンタさん、さらに雪だるまも入ってる。可愛いでしょう?

ロシアから輸入してて、戦争が始まって入りにくくなったけど、今年もなんとか入ったと店主が言ってました。世界各地の人々の生活に根差した品物って惹かれます。マトリョーシカは中国や日本の民芸品にヒントを得てるそうです。ここでも文化が交錯してる。好みは人それぞれだから、プレゼントしようと思うと、悩みますけど。

なぎさ: 心配しないでいいですよ。岩田商店もpoeも私を連れてってください。ほしいの選ぶから買って。女性の小物やアクセサリーは私、わかりますよ!