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  • 2020.10.18

桑名高校衛生看護科の皆さんへ 副院長より11

これは桑名高校衛生看護科の皆さんへ向けたお知らせです。
内容は精神科の試験の出題内容についてです(2020年度)。


精神医学について専門的な内容を深く掘り下げるとキリがありません。皆さんには臨床で役立つこと、特に精神科以外の科で働くうえでも大切なことを中心にお話したつもりです。

試験のための丸暗記はナンセンスです。したがって細かい誤字など些細なことは減点しません。皆さんは勉強しなければいけないこと、体験しなければいけないことが他にたくさんあります。ですから、授業時間だけでなく試験時間も含めて効率よく学んでいただけるように考えています。


試験問題は近年の看護師国家試験を改変して作っています。
今年の出題内容のヒントを以下に書いていきます。


まず、統合失調症について。
被害妄想があって興奮している方にどう対応するか。
統合失調症のかたが興奮している場合、「何かに狙われている! なんとか逃げないといけない」と思って興奮している場合がほとんどです。そういう相手に「騒ぐな!」など威嚇したら、「やはり狙われていたんだ!」と思ってよけい暴れますよね?

もう一つ。入院中のかかわり方についてです。激しい妄想が収まっても、やはり猜疑心は残っていて、ちょっとした会話でも被害的に捉えがちです。そういったかたと関わる場合は、まず辛抱強くそばにいて、余計な説得やおせっかいは慎む必要があります。


その次は、うつ病などで自殺念慮のあるかたへの対応です。
これは救急の現場でも大切になってきます。命を大切にしたほうがいい、死んだら家族が悲しむ、なんてことは誰でも分かっています。「死ぬ勇気があればなんでもできただろうに」という人もいますが、学校や職場を辞めるとか、いじめっ子や上司をぶん殴ろう!とか、そういった決断ができなくて、死ぬ以外の前向きな行動を選ぶ判断力がないから死を選ぶのです。

そういった方に必要なのは、安易なはげましではありません(だってその人は頑張って頑張って、その結果、どうしょうもなくなったのですから!)。ただ誰かがそばにいて自分を気遣って声をかけてくれることが一番重要です。
だから我々は「ひょっとしたら消えてしまおうとか、死んでしまおうとか思っていないですか」と声かけするのです。なるべく平静に。


その次はパーソナリティー障害への対応です。多くの場合、家庭や学校、職場で様々な問題を起こしていますし、自傷行為を繰り返していることが往々にしてあります。長期的には、そういった問題を解決する必要がありますが、まずさしあたっては信頼関係を構築することが必要です。

実際問題として、皆さんも出会ったばかりの看護師や医者に偉そうに説教されても聞く耳持てないですよね。ある程度の期間、自分を心配して世話してくれていた相手ならともかく。


その次に、アルコールの離脱症状について覚えておいてほしいです。アルコール依存症の対応が必要なのは、内科はもちろんとして、意外と多いのが整形外科です。大酒飲みの方が交通事故で入院。その数日後に急に様子がおかしくなるというケース。

また、アルコール依存症の家族への指導も理解しておいてほしいです。飲酒して仕事を無断欠勤してしまった際に、その人のお母さんや妻が代わりに職場へ電話して言い訳しているといったケースは多いです。そうやって家族が誤魔化している限り、本人は状況の深刻さに気付かず事態は悪化していきます。


最後に、2016年に起きた相模原障害者施設殺傷事件について、どんなことでも良いので思うことを書いていただきたいです。正しいとか間違いとかはありません。この事件の犯人が主張した思想は、イギリスの移民問題、アメリカの黒人差別(Black Lives Matterという言葉を聴いたことがあると思います)等ともつながる根の深い問題で、非常に重要です。Wikipediaに書かれた事実だけでなくNHKのこの記事(リンク先)もよろしければ参照してみてください。

皆さんが医療現場で働くようになれば、様々なハンディキャップを持った人たちと必ず関わります。純粋な精神疾患だけでなく、身体障害や何らかの疾患ゆえに様々な苦悩を持った方とも接するようになります。そういったときにどういった自分でありたいか、今から少しづつ考えていただけたらうれしいです。

最後のこの設問に関しては模範解答はありません。犯人に同情するだけでなく、犯人の意見に賛同する趣旨で書かれていても、その内容が納得できるものであれば点数をつけます。

誰かが作った模範解答ではなく、自分の頭で真剣に考えてほしいです。その結果間違えてもいいのです。間違えたら信頼できる仲間や先輩と相談して改めればいいだけです。

先生の言うことに従って丸暗記し続けても、本当の意味での理解も成長もありません。皆さんが様々なことを学び、自分の人生を充実したものにしていってこそ、真に患者さんや利用者さんの人生を豊かにする手助けができるはずです。

 
これは桑名高校衛生看護科の皆さんへ向けたお知らせです。
内容は精神科の試験の出題内容についてです(2020年度)。


精神医学について専門的な内容を深く掘り下げるとキリがありません。皆さんには臨床で役立つこと、特に精神科以外の科で働くうえでも大切なことを中心にお話したつもりです。

試験のための丸暗記はナンセンスです。したがって細かい誤字など些細なことは減点しません。皆さんは勉強しなければいけないこと、体験しなければいけないことが他にたくさんあります。ですから、授業時間だけでなく試験時間も含めて効率よく学んでいただけるように考えています。


試験問題は近年の看護師国家試験を改変して作っています。
今年の出題内容のヒントを以下に書いていきます。


まず、統合失調症について。
被害妄想があって興奮している方にどう対応するか。
統合失調症のかたが興奮している場合、「何かに狙われている! なんとか逃げないといけない」と思って興奮している場合がほとんどです。そういう相手に「騒ぐな!」など威嚇したら、「やはり狙われていたんだ!」と思ってよけい暴れますよね?

もう一つ。入院中のかかわり方についてです。激しい妄想が収まっても、やはり猜疑心は残っていて、ちょっとした会話でも被害的に捉えがちです。そういったかたと関わる場合は、まず辛抱強くそばにいて、余計な説得やおせっかいは慎む必要があります。


その次は、うつ病などで自殺念慮のあるかたへの対応です。
これは救急の現場でも大切になってきます。命を大切にしたほうがいい、死んだら家族が悲しむ、なんてことは誰でも分かっています。「死ぬ勇気があればなんでもできただろうに」という人もいますが、学校や職場を辞めるとか、いじめっ子や上司をぶん殴ろう!とか、そういった決断ができなくて、死ぬ以外の前向きな行動を選ぶ判断力がないから死を選ぶのです。

そういった方に必要なのは、安易なはげましではありません(だってその人は頑張って頑張って、その結果、どうしょうもなくなったのですから!)。ただ誰かがそばにいて自分を気遣って声をかけてくれることが一番重要です。
だから我々は「ひょっとしたら消えてしまおうとか、死んでしまおうとか思っていないですか」と声かけするのです。なるべく平静に。


その次はパーソナリティー障害への対応です。多くの場合、家庭や学校、職場で様々な問題を起こしていますし、自傷行為を繰り返していることが往々にしてあります。長期的には、そういった問題を解決する必要がありますが、まずさしあたっては信頼関係を構築することが必要です。

実際問題として、皆さんも出会ったばかりの看護師や医者に偉そうに説教されても聞く耳持てないですよね。ある程度の期間、自分を心配して世話してくれていた相手ならともかく。


その次に、アルコールの離脱症状について覚えておいてほしいです。アルコール依存症の対応が必要なのは、内科はもちろんとして、意外と多いのが整形外科です。大酒飲みの方が交通事故で入院。その数日後に急に様子がおかしくなるというケース。

また、アルコール依存症の家族への指導も理解しておいてほしいです。飲酒して仕事を無断欠勤してしまった際に、その人のお母さんや妻が代わりに職場へ電話して言い訳しているといったケースは多いです。そうやって家族が誤魔化している限り、本人は状況の深刻さに気付かず事態は悪化していきます。


最後に、2016年に起きた相模原障害者施設殺傷事件について、どんなことでも良いので思うことを書いていただきたいです。正しいとか間違いとかはありません。この事件の犯人が主張した思想は、イギリスの移民問題、アメリカの黒人差別(Black Lives Matterという言葉を聴いたことがあると思います)等ともつながる根の深い問題で、非常に重要です。Wikipediaに書かれた事実だけでなくNHKのこの記事(リンク先)もよろしければ参照してみてください。

皆さんが医療現場で働くようになれば、様々なハンディキャップを持った人たちと必ず関わります。純粋な精神疾患だけでなく、身体障害や何らかの疾患ゆえに様々な苦悩を持った方とも接するようになります。そういったときにどういった自分でありたいか、今から少しづつ考えていただけたらうれしいです。

最後のこの設問に関しては模範解答はありません。犯人に同情するだけでなく、犯人の意見に賛同する趣旨で書かれていても、その内容が納得できるものであれば点数をつけます。

誰かが作った模範解答ではなく、自分の頭で真剣に考えてほしいです。その結果間違えてもいいのです。間違えたら信頼できる仲間や先輩と相談して改めればいいだけです。

先生の言うことに従って丸暗記し続けても、本当の意味での理解も成長もありません。皆さんが様々なことを学び、自分の人生を充実したものにしていってこそ、真に患者さんや利用者さんの人生を豊かにする手助けができるはずです。