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  • 2018.05.06

精神科疾患 授業資料 2018/5/10桑名高等学校衛生看護科

メヂカルフレンド社 精神看護学2 第2章について5月10日の講義内容です。

1意識障害(P23)

実際の現場では、ジャパン・コーマ・スケールを使います。乱暴にいえば、2ケタは大声で呼べば目を開ける。3ケタは叩いても目を開けない状態です。

単純に意識がなくなることを昏睡(コーマcoma)と言います。対して昏迷とは、意識はあるが、目を開けず体も動かさない状態です(意欲の障害)。

一方で、複雑な意識障害もあります。錯覚や幻覚を伴うもので、せん妄と呼ばれます。たちの悪い寝ぼけや夢遊病のようなものです。術後せん妄のように環境の変化も相まって起こるものや、入院中の認知症高齢者に多い夜間せん妄は頻繁に遭遇します。

アルコール多飲者が入院して急にお酒を断った後に数日してから起こる震戦せん妄はお酒の離脱症状です。したがって飲酒中には起こりませんので注意してください。

覚醒は、脳幹の「上行性網様体賦活系」と「視床下部調節系」でコントロールされています。睡眠薬はここに作用します。脳幹は自律神経の中枢です。完全に抑制されると命に関わります。なるべくピンポイントに作用する薬剤を選びたいです。

上行性網様体賦活系(刺激されると覚醒する)
→バルビツレート酸系の睡眠・麻酔薬はここを抑えてしまう

視床下部調節系(睡眠覚醒のリズムを作る)
→ ベンゾジアゼピン系抗不安・睡眠薬(メイラックス、ワイパックス、デパス、レンドルミンなど)は主にここの受容体群に作用。催眠、抗不安に働きます。筋弛緩作用は呼吸抑制が起きたり、足がふらついて転倒につながります。非ベンゾジアゼピン系睡眠薬(マイスリー、ドラール、アモバン、ルネスタなど)は抗不安、筋弛緩作用が少なく高齢者に使っても安全です(P165)

さらに特定の部位に作用する新薬としては、ロゼレムやベルソムラがあります。ロゼレムは、松果体のメラトニン受容体作動薬で、睡眠覚醒のリズムを整えます。 ベルソムラは、視床下部のオレキシン受容体拮抗薬で、覚醒レベルを落とし自然な眠りを促します。


2知覚の障害(P28)
幻聴と幻視が大切です。幻聴は統合失調症で多いですが、重症のうつ病や躁うつ病でも認めます。幻聴の命令にしたがって行動してしまうことがあります。つまり幻聴は受身的な体験です(何かに影響を受けるような体験→自我意識の障害です)。

一方で幻視は能動的なものが多いです。主な原因は中毒性、症状性、器質性精神疾患です。例えば、違法薬物による中毒、アルコール離脱せん妄(震戦せん妄)、レビー小体型認知症です。


3思考の障害(P29)

思考過程の異常

躁うつ病の観念奔逸と統合失調症の滅裂思考の区別が重要です。
観念奔逸はまだ常識で理解しやすい論理の飛躍ですが、滅裂思考は、考えが全くまとまっておらず、話題の相互関連性がなく本人にしか通じない論理展開です。

思考内容の異常

うつ病や躁うつ病(双極性障害)などで認める妄想は、理由が推測しやすいので二次妄想と呼ばれますが、統合失調症においては、何の理由もなく妄想が生じるため一次妄想と呼ばれます。

何の前触れもなく「自分は宇宙人から地球を救う使命を受けた」と感じるなど、本人以外には理由が理解できません。逆に認知症で多い嫉妬妄想は、身体の衰え(歩けない、目が見えない)ことから配偶者の浮気を疑うといった比較的理解しやすいものです。

思考体験の異常

強迫観念とは、無駄と分かっていても考えずにはいられないこと(何回でも手を洗いたい)で、強迫行為とは、実際に何百回と手を洗ってしまうことです。無駄だと分かっていてもやめられません。強迫症だけでなく、統合失調症、自閉スペクトラム症でも起こることがあります。

自生思考とは勝手に考えが浮かんだり、好きでもないメロディーが頭の中で鳴り続ける状態です。統合失調症の前触れのことがあります。

自分の行動をコントロールできず、誰かに操られていると思う体験(させられ体験)には以下があります。
①させられ思考は、自分の主体性が損なわれ、外部の何かに操られていると感じる状態です。
②思考奪取は「自分の考えが抜き取られて無くなった」という体験。思考吹入は「外から考えを吹き込まれる」こと。
③思考伝播は「自分の考えが周囲に漏れ伝わってしまう」こと。
これらは自我意識の障害でもあります。解離性障害や統合失調症で生じます。


4感情の障害(P33)

不安発作(不安症、特にパニック症)や抑うつ気分(うつ病)、爽快気分(双極性障害、躁うつ病)が大切です。躁うつ病の爽快気分とは気分がハイになっていますが必ずしも楽しいわけではなく、刺激に反応しやすく(易刺激性)、苛々した状態です。


5意欲・行動の障害(P35)

躁病性興奮は躁うつ病の観念奔逸から生じ、緊張病性興奮(精神運動性興奮)は統合失調症の滅裂思考から起こります。考えがまとまらない程度があまりに酷いと、逆に全く動けなくなり、統合失調症による(緊張病性)昏迷に陥ります。重度のうつ病で、何も考えられないほど意欲が無くなっても、昏迷になります。


6自我意識の障害

外界と自分、意識と無意識の区別がなくなってしまいます。前述のさせられ体験や、苦痛を感じないために、心のある部分を切り離す解離症は自我意識の障害です。解離症はひどくなると記憶喪失や二重人格を引き起こします。(P107も参照)


7―10について

睡眠障害(不眠など)は精神疾患の始まりかもしれません。

記憶障害、見当識障害がしだいに進行していくのが認知症、急激に起こって原因が取り除かれたら治るのがせん妄。最初から知能が低いのが知的障害です。時間経過による症状の変化に留意してください。

高齢者のうつ病でも見かけ上の記憶障害が起こります。認知症との鑑別が必要です。
うつ病では、自信がないため、分かる質問にも「わかりません」と答えがちですが、認知症の場合は、わからないことを誤魔化そうとして作話をする(でたらめな答を自信満々で答える)場合があります。


以上の内容は、分かりやさを優先して簡略化して説明しています。実際の臨床上では例外も多いのでご注意下さい。

北勢病院 精神科医師 森豊和
メヂカルフレンド社 精神看護学2 第2章について5月10日の講義内容です。

1意識障害(P23)

実際の現場では、ジャパン・コーマ・スケールを使います。乱暴にいえば、2ケタは大声で呼べば目を開ける。3ケタは叩いても目を開けない状態です。

単純に意識がなくなることを昏睡(コーマcoma)と言います。対して昏迷とは、意識はあるが、目を開けず体も動かさない状態です(意欲の障害)。

一方で、複雑な意識障害もあります。錯覚や幻覚を伴うもので、せん妄と呼ばれます。たちの悪い寝ぼけや夢遊病のようなものです。術後せん妄のように環境の変化も相まって起こるものや、入院中の認知症高齢者に多い夜間せん妄は頻繁に遭遇します。

アルコール多飲者が入院して急にお酒を断った後に数日してから起こる震戦せん妄はお酒の離脱症状です。したがって飲酒中には起こりませんので注意してください。

覚醒は、脳幹の「上行性網様体賦活系」と「視床下部調節系」でコントロールされています。睡眠薬はここに作用します。脳幹は自律神経の中枢です。完全に抑制されると命に関わります。なるべくピンポイントに作用する薬剤を選びたいです。

上行性網様体賦活系(刺激されると覚醒する)
→バルビツレート酸系の睡眠・麻酔薬はここを抑えてしまう

視床下部調節系(睡眠覚醒のリズムを作る)
→ ベンゾジアゼピン系抗不安・睡眠薬(メイラックス、ワイパックス、デパス、レンドルミンなど)は主にここの受容体群に作用。催眠、抗不安に働きます。筋弛緩作用は呼吸抑制が起きたり、足がふらついて転倒につながります。非ベンゾジアゼピン系睡眠薬(マイスリー、ドラール、アモバン、ルネスタなど)は抗不安、筋弛緩作用が少なく高齢者に使っても安全です(P165)

さらに特定の部位に作用する新薬としては、ロゼレムやベルソムラがあります。ロゼレムは、松果体のメラトニン受容体作動薬で、睡眠覚醒のリズムを整えます。 ベルソムラは、視床下部のオレキシン受容体拮抗薬で、覚醒レベルを落とし自然な眠りを促します。


2知覚の障害(P28)
幻聴と幻視が大切です。幻聴は統合失調症で多いですが、重症のうつ病や躁うつ病でも認めます。幻聴の命令にしたがって行動してしまうことがあります。つまり幻聴は受身的な体験です(何かに影響を受けるような体験→自我意識の障害です)。

一方で幻視は能動的なものが多いです。主な原因は中毒性、症状性、器質性精神疾患です。例えば、違法薬物による中毒、アルコール離脱せん妄(震戦せん妄)、レビー小体型認知症です。


3思考の障害(P29)

思考過程の異常

躁うつ病の観念奔逸と統合失調症の滅裂思考の区別が重要です。
観念奔逸はまだ常識で理解しやすい論理の飛躍ですが、滅裂思考は、考えが全くまとまっておらず、話題の相互関連性がなく本人にしか通じない論理展開です。

思考内容の異常

うつ病や躁うつ病(双極性障害)などで認める妄想は、理由が推測しやすいので二次妄想と呼ばれますが、統合失調症においては、何の理由もなく妄想が生じるため一次妄想と呼ばれます。

何の前触れもなく「自分は宇宙人から地球を救う使命を受けた」と感じるなど、本人以外には理由が理解できません。逆に認知症で多い嫉妬妄想は、身体の衰え(歩けない、目が見えない)ことから配偶者の浮気を疑うといった比較的理解しやすいものです。

思考体験の異常

強迫観念とは、無駄と分かっていても考えずにはいられないこと(何回でも手を洗いたい)で、強迫行為とは、実際に何百回と手を洗ってしまうことです。無駄だと分かっていてもやめられません。強迫症だけでなく、統合失調症、自閉スペクトラム症でも起こることがあります。

自生思考とは勝手に考えが浮かんだり、好きでもないメロディーが頭の中で鳴り続ける状態です。統合失調症の前触れのことがあります。

自分の行動をコントロールできず、誰かに操られていると思う体験(させられ体験)には以下があります。
①させられ思考は、自分の主体性が損なわれ、外部の何かに操られていると感じる状態です。
②思考奪取は「自分の考えが抜き取られて無くなった」という体験。思考吹入は「外から考えを吹き込まれる」こと。
③思考伝播は「自分の考えが周囲に漏れ伝わってしまう」こと。
これらは自我意識の障害でもあります。解離性障害や統合失調症で生じます。


4感情の障害(P33)

不安発作(不安症、特にパニック症)や抑うつ気分(うつ病)、爽快気分(双極性障害、躁うつ病)が大切です。躁うつ病の爽快気分とは気分がハイになっていますが必ずしも楽しいわけではなく、刺激に反応しやすく(易刺激性)、苛々した状態です。


5意欲・行動の障害(P35)

躁病性興奮は躁うつ病の観念奔逸から生じ、緊張病性興奮(精神運動性興奮)は統合失調症の滅裂思考から起こります。考えがまとまらない程度があまりに酷いと、逆に全く動けなくなり、統合失調症による(緊張病性)昏迷に陥ります。重度のうつ病で、何も考えられないほど意欲が無くなっても、昏迷になります。


6自我意識の障害

外界と自分、意識と無意識の区別がなくなってしまいます。前述のさせられ体験や、苦痛を感じないために、心のある部分を切り離す解離症は自我意識の障害です。解離症はひどくなると記憶喪失や二重人格を引き起こします。(P107も参照)


7―10について

睡眠障害(不眠など)は精神疾患の始まりかもしれません。

記憶障害、見当識障害がしだいに進行していくのが認知症、急激に起こって原因が取り除かれたら治るのがせん妄。最初から知能が低いのが知的障害です。時間経過による症状の変化に留意してください。

高齢者のうつ病でも見かけ上の記憶障害が起こります。認知症との鑑別が必要です。
うつ病では、自信がないため、分かる質問にも「わかりません」と答えがちですが、認知症の場合は、わからないことを誤魔化そうとして作話をする(でたらめな答を自信満々で答える)場合があります。


以上の内容は、分かりやさを優先して簡略化して説明しています。実際の臨床上では例外も多いのでご注意下さい。

北勢病院 精神科医師 森豊和